健康食品はさまざまなルールにより規制されています。
・薬機法:医薬品的な効能効果を表現していないか。
・健康増進法:栄養成分、熱量などが表示され、かつ虚偽・誇大表示されていないか。
・食品衛生法:名称、添加物、保存方法、製造元などが表示されているか。
・特定商取引法:虚偽・誇大な表現になっていないか。
・景品表示法:優良誤認、有利誤認といった不当表示でないか。
・JAS法:名称や原材料名、賞味期限などが表示されているか。
健康食品の製造、輸入、販売にあたっては、
・薬機法
・食品衛生法
・健康増進法
による規制があります。
また、表示方法や販売方法に関しては
・食品表示法
・景品表示法
・特定商取引法
・JAS法
の規制を受けます。
今回は、健康食品に関連する薬機法と健康増進法についてまとめました。
目次
健康食品に対する薬機法とは?
薬機法とは、
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品について、
製造・販売・安全対策などを細かく規制している法律です。
第一条
この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。
※引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」の
品質、有効性及び安全性を確保することが目的です。
ですので、健康食品に対して
医薬品的な効果・使い方を示したり、医薬品にしか使えない原料を使うと薬機法違反
となります。
健康食品で薬機法を守るための重要ポイントは3つあります。
①効能効果を表現してはいけない
②体の特定部位を表現してはいけない
③病名・症状を表現してはいけない
46通知
健康食品が薬機法違反となるかの判断は、
「医薬品と誤解されるかどうか」で決まります。
その判断基準は4つあり、厚生労働省が昭和46年に通知した
「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」の「医薬品の範囲に関する基準」
の中で定められています。
このルールは、通称「46(よんろく)通知」と呼ばれています。
※参考 無承認無許可医薬品の指導取締りについて 厚労省
4つの判断基準
「食品」か「医薬品」かの区別は、
以下の4つを総合的に判断します。
①成分
②形状
③効能効果
④用法用量
いずれかに該当し医薬品と判断されると、「無承認無許可医薬品」とみなされ、薬機法違反となります。
①成分について
医薬品として使用される成分は食品には使えません。
「医薬品的な効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に記載されているものは健康食品に利用ができます。
ただし、部位を明記する必要があります。
「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に記載されているものは、医薬品専用の成分のため、健康食品への利用はできません。
リストは随時更新されています。物の成分本質(原材料)について 東京都福祉保健局を確認しましょう。
②形状について
アンプル、舌下錠、舌下に滴下するもの、口の中に噴射するスプレー式は食品には使えません。
アンプルは通常の食品としては流通しない形状であり、「医薬品ではないか」と勘違いをしてしまう可能性があるので、使用不可です。
カプセルは「食品」と明示されている場合には使用できます。
③効能効果について
以下のような表現は、医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなされます。
・疾病の治療又は予防を目的とする効能効果
(例)
糖尿病に効く
高血圧の改善
動脈硬化の人に
ガンがよくなる
眼病の人のために
便秘がなおる 等
・身体の組織機能の増強、増進を目的とする効能効果
(例)
老化防止
若返り
新陳代謝を盛んにする
内分泌機能を盛んにする
病気に対する自然治癒能力が増す
病中・病後に
成長促進 等
・医薬品的な効能効果の暗示
(a) 名称又はキャッチフレーズよりみて暗示するもの
(例)
延命〇〇
薬〇〇
不老長寿
漢方秘法
皇漢処方 等
(b) 含有成分の表示及び説明よりみて暗示するもの
(例)
体質改善
健胃整腸で知られる〇〇を原料とし
これに有用成分を添加して 等
(c) 製法の説明よりみて暗示するもの
(例)
〇〇等の薬草を独特の製造法
製法特許出願によって調製したものである 等
(d) 起源、由来等の説明よりみて暗示するもの
(例)
〇〇という古い自然科学書をみると
こうした経験が昔から伝えられ食膳に必ず備えられたもの 等
(e) 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することにより暗示するもの
(例)
医学博士〇〇の談
「昔から赤飯に〇〇をかけて食べると癌にかからぬといわれている」 等
④用法用量について
服用時期、服用間隔、服用量等の記載がある場合には、
原則として医薬品的な用法用量とみなされるので、健康食品の使用方法として標ぼうすることはできません。
(例)
1日2個
毎食後、添付のサジで2杯づつ
食前、食後に1~2個づつ
お休み前に
心臓の弱い方に1日3個
広告作成には、飲む対象の記載にも注意が必要です。
薬機法における広告の定義
広告の定義は次の3つです。
1.顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること
2.特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
3.一般人が認知できる状態であること
引用:○薬事法における医薬品等の広告の該当性について
薬機法の対象となる広告媒体
新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト及びソーシャル・ネットワーキング・サービス等のすべての媒体における広告が対象となります。
引用 :医薬品等適正広告基準の改正について
薬機法上、広告にあたる場合
⇒「お客様の声」でも、医薬品の効能効果をうかがわせるものを広告に使うと薬機法違反になってしまいます。
健康食品とは?
健康食品に対する正式な定義はありません。
一般的には、普通の食品よりも健康に良いとされる食品ということです。
この法律で食品とは、全ての飲食物をいう。
ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品は、これを含まない。
※引用 食品衛生法(◆昭和22年12月24日法律第233号)
食品は、薬機法に規定する医薬品及び医薬部外品以外のすべての飲食物をいいます。
つまり、口から食べたり飲んだりするものは、
①食品
②医薬品
③医薬部外品
のどれかに当てはまります。
健康食品の分類
健康食品は「一般健康食品」と「保健機能食品」に分けられます。
保健機能食品は、さらに
「栄養機能食品」
「特定保健用食品」
「機能性表示食品」
の3つに分けられます。
①栄養機能食品
ビタミンやミネラルなどの栄養成分の補給のために利用できる食品。
・決められた範囲内で効能が表示できる。
・個別の許可申請を行うことなく「栄養機能食品」を謳うことができる。
・栄養機能食品としての成分が限定されている。(食品表示基準参照)
②特定保健用食品
「トクホ」と呼ばれている食品です。
健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められており、
「おなかの調子を整える」「コレステロールの吸収を抑える」など
決められた範囲内で効能効果の表示が許可されている食品です。
「特定保健用食品」表示には消費者庁長官の許可が必要で、
表示されている効果や安全性については国が個別に審査を行います。
・届出と承認が必要。
・手続きに費用がかかる。
・国が身体への効果や安全性の審査を行う。
・消費者庁許可のマークと「特定保健用食品」と表示されている。
・病気と診断されていない人が対象。
許可表現の例
・おなかの調子を整えます。
・血圧が高めの方に適しています。
・歯の健康維持に役立つ食品
・糖の吸収を穏やかにします。
・コレステロールの吸収を抑える働きがあります。
※引用 特定保健用食品の許可表示例 内閣府
③機能性表示食品
国の基準に基づき、
食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を
消費者庁長官に届け出た食品。
食品の機能性(効果)を表示することができます。
特定保健用食品とは異なり、
消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。
・国の審査は必要ない
・科学的根拠が必要
・機能性表示食品を表示している。
機能性表示食品では、2つの表現が禁止されています。
・病気の予防や診断を表現すること
・体の機能変化の表現すること
薬機法に違反するとどうなるのか?
健康食品において薬機法に違反すると、「行政指導」と「刑事摘発」が行われます。
・行政指導
行政が行う是正措置のことです。
指導を受けた場合は、報告書に提出が必要です。
2021年8月からは課徴金制度も始まっています。
・刑事摘発
健康食品が医薬品と誤解されるような表現をすると無承認無許可医薬品と判断され、
以下のような罰則が科せられます。
(薬事法24条、68条、84条、85条)
無承認無許可医薬品として販売して場合
3年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはこの両方
無承認無許可医薬品として広告をだした場合
2年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこの両方
明らかに食品である場合の薬機法
誰がどう見ても「これは食品だ」と認められるものについては、
医薬品的な効能効果をうたっても、薬機法違反にはなりません。
ただし、虚偽・誇大広告に注意する必要があります。
次の物は判定表による判定を待つまでもなく、当然に、医薬品に該当しないとされています。
①野菜、果物、調理品等その外観、形状等よりみて明らかに食品と認識される物
②健康増進法(平成14年法律第103号)第26条の規定に基づき許可を受けた表示内容を表示する特別用途食品
③食品表示法(平成25年法律第70号)第4条第1項の規定に基づき制定された食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条第1項第10号の規定に基づき届け出た表示内容を表示する機能性表示食品
参考 健康食品の監視指導について 東京都福祉保健局
明らかに食品であると認められるものの例
①野菜、果物、卵、食肉、海藻、魚介等の生鮮食料品及びその乾燥品
(ただし、乾燥品のうち医薬品として使用される物を除く)
②加工食品
(例)豆腐、納豆、味噌、ヨーグルト、牛乳、チーズ、バター、パン、うどん、そば、緑茶、紅茶、ジャスミン茶、インスタントコーヒー、ハム、かまぼこ、コンニャク、清酒、
ビール、まんじゅう、ケーキ、等
③1、2の調理品(惣菜、漬物、缶詰、冷凍食品 等)
④調味料
(例) 醤油、ソース 等
明らか食品でないもの
行政は、以下のものは運用上明らか食品と認めません。
・有効成分が添加されている場合
・一般性がない場合
・主目的が食にない場合
行政の認める明らか食品は、
「我々が従来から食品として食してきた物であって成分的に問題のないもの
(医薬品的な成分が入っていないもの)」
ということになります。
つまり、「緑茶」のように昔からたしなんできているが、
最近になってその効能が科学的に認められてきた物について効能を言う事は許されます。
同じお茶でも、「ジャスミン茶」のようななじみの薄いものについては
明らか食品とは認められていません。
また「やせるガム」「花粉症防止あめ」というような、体に影響を与えるような加工をした場合は、明らか食品とは認められません。
健康増進法と健康食品
健康増進法第65条の1
何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。
※引用 健康増進法
健康保持増進効果等に関する虚偽誇大広告を禁止する目的があります。
健康増進法違反となるのは?
以下の3つがあてはまると健康増進法違反となります。
①広告とみなされること
②健康保持増進効果であること
③表現内容が誤解を招く表現であること
健康保持増進効果とは?
以下のような表現を健康保持増進効果といいます。
・疾病の治療、予防を目的とする表現
・身体の組織機能の雑徭、増進を目的とする表現
・特定の保健の用途に適する旨や栄養成分の効果に関する表現
・最上級・最高級に関する表現
・含有する食品、成分の量や含有を示す表現
・身体の美化等を示す表現
・行政機関が認めたような表現
・伝聞調の表現
・認証等が健康保持増進効果に関係するものではない
・起源・由来の説明
・好転反応に関する表現
・体外排泄によるダイエットを謳う表現
・医師の診断や治療なく治癒できるかのような表現
・健康食品を摂れば運動や食事制限なく、短期間で容易にやせられるかのうような表現
参考 健康食品に関する 景品表示法及び健康増進法上の 留意事項について 消費者庁
健康増進法に違反すると?
①国民の健康の保持増進に重大な影響を与えるおそれがある場合、
その表示に関し必要な措置をとるべき旨の勧告
↓
②正当な理由なく、勧告に関わる措置をとらなかった場合、
そのものに対し、その勧告に関わる措置をとるべき旨の命令
↓
③命令に従わなかった場合、罰則を適用。
6か月以下の懲役または100万円以下の罰金
参考 健康食品に関する 景品表示法及び健康増進法上の 留意事項について 消費者庁
まとめ
健康食品自体は、薬機法の対象ではありません。
しかし、決められた範囲を超えたものや、必要な審査を受けずに承認が得られないものを表示・販売することはできません。
広告で標ぼうするときには注意が必要です。
健康食品を扱う場合は、さまざまな視点から関係法令に抵触していないか、確認することが大切です。