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2021.08.07

広告における薬機法の目的とは?

 

 

「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」を扱うとき、「薬機法(旧・薬事法)」を把握しておく必要があります。

 

消費者を守る目的で、薬機法の違反に対する取り締まりが厳しくなってきています。
2021年8月からは改正薬機法が施行され、「課徴金制度」も導入されました。

 

オンライン上でも厳しく取り締まりが進んできています。

 

もはや「知りませんでした」では通用しないのです。
そこで今回は、薬機法の概要とポイントを解説していきます。

 

 

薬機法とは? 

 

正式名称は
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。
「薬機法」とは、略称のことです。
「医薬品医療機器等法」とも呼ばれています。

 

2014年に現在の名称に変わりました。
「薬事法」と記憶している人もいるかもしれません。

 

薬機法とは、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品について、製造・販売・安全対策などを細かく規制している法律です。
ですので、医薬品、医薬部外品、化粧品等を扱う事業者は、薬機法を守らなければなりません。

 

薬機法の目的は?

 


第一条

 

この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。

 

※引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律


 

まとめますと、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」の品質、有効性及び安全性を確保することが目的です。
これらを使用した後に、保健衛生上の危害が発生してしまうことや、危害が拡大してしまうことを防止します。
また、指定薬物を規制すること、研究開発を進めて保健衛生の向上を図ることを目的としています。

 

再生医療等製品については、2014年の改正時に定義された、比較的新しい内容です。
医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売業・製造業や高度管理医療機器等販売業に関しての改正がありました。

 

薬機法の規制対象は?

・医薬品
・医薬部外品
・化粧品
・医療機器
・再生医療等製品

 

の5項目です。
対象物の定義を確認していきます。

 

・医薬品の定義

 


法第2条第1項

 

人又は動物の疾病、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品でないもの(医薬部外品を除く)

 

ここで言う治療とは、例えば、頭痛を治したり、胃の痛みをやわらげたりすることです。
今ある症状を治すために使われるものが、医薬品ということになります。


 

 

・医薬部外品の定義

 


法第2条第2項

 

次に揚げる目的のために使用される物で機械器具等でなく、人体に対する作用が緩和なもの。

・吐き気その他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
・あせも、ただれ等の防止
・脱毛の防止、育毛又は除毛

人又は動物の保険のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物で機械器具等でないもの。


 

・化粧品の定義

 


法第2条第3項

 

人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪をすこやかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。


 

ドラッグストアでよく見かけるものです。
具体的に、メーキャップ化粧品、基礎化粧品、ヘアトニック、香水、歯磨き、シャンプー、リンス、接見、入浴剤 などですね。

 

・療機器の定義

 


法第2条第4項

 

人又はは動物の疾病の診断、治又は予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)。


 

・再生医療等製品の定義

 


法第2条第9項

 

人の細胞に培養等の加工を施したものであって

①身体の構造・昨日の再建・修復・形成
②疾病の治療。予防を目的として使用するもの

遺伝子治療を目的として、人の細胞に導入して使用するもの


 

どうして薬機法が大事なの?

 

医薬品等の商品は効能効果が人体に作用するため、消費者の健康や生命へ影響を及ぼす可能性があります。

 

医薬品等とは
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品を総合した表現のことです。

 

厚生労働省に認められていない成分で作られていたり、企業が出している誇大広告により消費者が誤って使用したりしてしまうと非常に危険です。

 

薬機法は、厚生労働省が管轄しており、医薬品等を扱う企業にとって大切な法律です。
製造や使用だけでなく、流通や広告を扱う業者にも適用されます。

 

 

薬機法における「広告」とは 

 

広告の定義

 

広告の定義は次の3つです。

 

1.顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること
2.特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
3.一般人が認知できる状態であること

 

引用:○薬事法における医薬品等の広告の該当性について

 

薬機法の対象となる広告媒体

 


新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト及びソーシャル・
ネットワーキング・サービス等のすべての媒体における広告が対象となります。

 

引用 :医薬品等適正広告基準の改正について


 

広告についての規制内容

 

広告規制についてのポイントは以下の2つです。

①医療品等の効果・効能、性能についての虚偽・誇大な広告の禁止
②医師が保証したと誤認を与えるおそれのある記事の広告の禁止

詳しく見ていきましょう。

「薬機法」の広告規制は、「医薬品等の広告(薬機法第66条〜68条)」で定められています。

 


誇大広告の禁止(第66条)

 

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。


 

「誇大広告」とは、事実に反する虚偽の表現や誇張した表現により消費者に誤った認識をさせるおそれのある広告をいいます。

 

ここで重要なポイントは、
「何人も」
とあるように、広告主は限定されていないことです。

 

製造販売する企業だけでなく、広告を掲載するメディアも規制の対象となっています。

 

最近では、インターネット上での広告も増えています。
注意しなければならないのが、個人がインターネット上で商品を紹介している場合も広告とみなされるケースがあるということです。

 

具体的には、インフルエンサーによるSNS投稿において、商品についての具体的な内容や感想を書いた記事をアップしているとします。

 

この記事が、
「PR目的である」
「商品名を提示している」
「誰でも認知できる状態」
である場合は、「広告の定義」の要件を全て満たしているため、「広告」と判断されます。

 

つまり、個人が気軽に書いたとしても、薬機法での取り締まりの対象の記事であるということになるのです。

今後は、誰もが薬機法を理解した上で発信していく必要性があるということになります。

 


特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限(第67条)

 

政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品を指定し、その医薬品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。

厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。


承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止(第68条)

 

何人も、第14条第1項又は、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

 

※引用:薬事法における広告規制
※引用:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律


 

ここで、特に注意したいのは健康食品の広告。

健康食品は、薬機法上の定義はありません。

 

一般食品と同じ扱いになり、医薬品とみなされないので、広告に健康食品の効能効果を標榜することはできません。

 

健康食品の効能効果を表現した場合、無免許での医薬品販売、また未承認の医薬品広告を禁止する第68条違反となります。

 

実際の監視については、厚生労働省が各地方自治体に通知している「医薬品等適正広告基準」に基づいて運用されています。
広告作成時には薬機法と合わせて、活用していきましょう。

 

広告でどこまで表現していいの?

 

薬機法で規制されている
「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」
は、表現できることは薬機法ですべて決められています。

 

・化粧品

 

医薬品等適正広告基準によると、
化粧品で認められている効能・効果は56項目に分類されています。

ですので、化粧品で訴求できるのは、化粧品に標榜が認められている56の効能効果の範囲内であり、効果が事実であれば表現することができます。

つまり、決められた効能・効果の範囲を超えるような表現は、薬機法違反となります。

参考:化粧品の効能の範囲の改正について| 厚生労働省

 

・健康食品・サプリメント

 

前述したように、健康食品は薬機法の規制対象ではありません。
健康食品は、あくまでも食品です。
治療・予防を目的とする医薬品ではないので、機能を訴求することはできません。

 

ですので、病気や症状、身体の一部や機能に効果があるかのような表現は医薬品的な表現とみなされ、薬機法違反となります。

 

薬機法違反のペナルティは? 

 

薬機法に違反してしまった場合どのようになるのでしょうか。

違反を行った場合は、
①行政指導
②刑事罰
が行われます。

 

①行政指導が入った場合は、違法状態の改善を求められます。
報告書の提出義務があります。

 

②刑事罰については、罰金のみの場合が多いです。
無承認無許可医薬品については、
販売すると「3年以下の懲役もしくは二百万円以下の罰金」
広告すると「2年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金」
という罰則が定められています。
参考図(出典:厚生労働省)

 

2021年8月より課徴金制度が導入されました。
薬機法第75条5項2以降で規定されています。


薬機法第75条5項2

 

課徴金納付命令の対象となる「課徴金対象行為」とは、医薬品、医療機器等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽・誇大広告の禁止(同法第66条第1項)に違反する行為です。(同法第75条の5の2第1項)

 

※引用:課徴金制度の導入について|厚労省


課徴金制度については、別項で詳しく解説しています。
https://docs.google.com/document/d/1G53JOfpc8QO9hEaf84FEBFE2tQMz5fG3jBVrkP1ysto/edit#

 

 

まとめ

 

以上、薬機法の基礎の部分をまとめました。

薬機法の規定やガイドラインは、適時見直しされることが想定されます。

 

企業、広報だけでなく、個人でも、
商品が薬機法の規制にかかるかどうか、日々チェックしておくことが大切です。

 

「誇大広告」に対する認識が広がってきています。
課徴金制度が導入され、
今後規制強化の流れはより強まってくることでしょう。

 

薬機法に抵触する可能性がある表現で目先の売上をあげようとする行為は大変危険です。
消費者との信頼関係にも影響します。
責任を持つうえで、法令遵守はとても大切なことと言えるでしょう。